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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)157号 判決

主文

理由

上告代理人酒井信雄、同滝敏雄の上告理由について。

記録に徴するに、被上告人らは、原審において、本件土地につき、訴外岩崎政勝の債権の担保のため抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記が順次なされていたところ、旧国税徴収法(明治三〇年法律第二一号)に基づく国税滞納処分として公売処分がなされるに至り、岩崎において、右公売による売却代金の一部を受領するとともに、右抵当権および仮登記上の権利の消滅を所轄税務署長に対して承認したものである旨の事実を主張していたことが明らかであり、この主張は、公売処分の効果として抵当権および仮登記上の権利が法律上消滅したとの趣旨を含むものと解されないことはない(記録二二六丁、四四七丁参照)。そして、不動産の公売処分により、抵当権が消滅すべき場合には、右抵当権の設定登記より後順位に仮登記された所有権移転請求権も消滅するものであることは、当裁判所の判例とするところである(昭和三九年(オ)第六四〇号、同四一年三月一日第三小法廷判決・民集二〇巻三号三三七頁参照)。したがつて、原判決が、その確定した事実関係のもとにおいて、右仮登記上の権利が公売処分によつて消滅したと判断したことは正当であり、右判断が当事者の主張しない事項についてなされたものということはできない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 岡原昌男 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一 裁判官 小川信雄)

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